今回のダボス会議で議論された主なトピック【前編】
【日経平均の現状】
今週の日経平均は急落局面があったが、事前の想定通り、MaxPainの52000円処が見事にサポートされ、急反発している。
日々公表される大口投資家(機関投資家等)や短期筋の手口を根拠として、
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【ダボス会議について:株式市場の見通し】
今回のダボス会議では、世界経済と株式市場の先行きについて前年より明るい見通しが示された。
世界経済フォーラム(WEF)の「チーフエコノミスト展望」調査によれば、今後景気が弱まると見る専門家は約半数にとどまり、前年の悲観論から大幅に減少している。
一方でAIブームに沸いた株式市場への警戒感も議論された。
2025年には生成AI(大規模言語モデル)への巨額投資によってハイテク株の評価が急上昇し、米国では株高による「ウェルス効果」が個人消費を押し上げたと指摘されている。
バークレイズのチーフエコノミスト、クリスチャン・ケラー氏は「米国経済が予想以上に底堅かったのはAIブームによる株価上昇のおかげだ」と分析する一方、そのAI株高がバブルなのか持続可能なのかがマクロ経済全体の鍵になると述べた。
もっとも、ドットコム時代と異なり現在のテック企業は潤沢な利益と資金に支えられており、債務主導ではないため「健全な投資ブーム」と見る向きもある。
いずれにせよ、米国のいわゆる「マグニフィセント7」と呼ばれる巨大ハイテク株の動向は世界の投資家に波及しやすく、ダボス会議参加者は地域を超えた市場波及リスクにも言及した。
加えて、地政学リスクも市場に影を落としている。
例えばトランプ米大統領によるグリーンランド買収を巡る発言や対欧追加関税示唆は一時市場を動揺させたが、その後軍事行動を取らないとの表明で株式市場が持ち直している。
全体として、ダボス会議では「昨年より慎重ながらも前向き」という株式市場観測が示され、生成AIブームによる株高の恩恵とリスクが議論されたと言える。
【金融市場と金利政策】
世界的な金融市場と金利政策については、米国・日本の長期金利上昇がホットな話題となった。
ダボス会議では米国のベッセント財務長官が、日本の国債利回り急騰に言及し「日本国内の状況と市場の反応を切り離して考えるのは極めて難しい」と述べている。
ベッセント財務長官はダボスで「日本当局と連絡を取っており、市場を沈静化させる発言を始めると確信している」と強調し、日本側に速やかな安定化策を促した。
しかし、米欧間の対立(トランプ大統領によるデンマーク領グリーンランド購入要求と欧州への関税警告)が米国債売りを招き、
米金利上昇を招いた主因ではないかとの見方も根強く、「米財務長官は責任回避に努めている」と受け止める声がある。
トランプ大統領がグリーンランド問題で反対する欧州8か国に追加関税(当初10%、のち25%)を示唆したことで米欧関係は悪化し、デンマークやドイツの年金基金が米国債を売却・ボイコットする動きも伝えられた。
この結果、「米国債=安全資産」というイメージに揺らぎが生じ、米10年債利回りは一時5か月ぶり高水準の4.31%まで急伸した。
欧州からは、Christine Lagarde欧州中央銀行総裁がフランスのRTLラジオで「欧州経済は新たな国際秩序に直面して『徹底的な見直し』が必要」と発言し注目された。
同氏は、米国の関税策によるユーロ圏へのインフレ波及はごくわずか(欧州のインフレ率は1.9%と目標に収まりつつある)だが、「度重なる方針転換による不確実性の方がよほど深刻だ」とトランプ政権の通商姿勢を批判している。
トランプ大統領が欧州各国に対しグリーンランド問題で高圧的な取引姿勢を示していることに対し、ラガルド総裁は「欧州は落ち着いて団結し断固たる態度を示すべきだ」と呼びかけました。
一方、トランプ大統領はダボスで演説し、「就任1年で米国はスタグフレーション(低成長・高インフレ)の悪夢を脱し、今やインフレほぼゼロかつ非常に高い成長を実現した」と発言した。
クレジットカード金利を1年間10%上限にする法案を議会に求めるなど、家計負担軽減策を次々と打ち出し、平均30年固定住宅ローン金利が数年ぶりに6%を下回ったことも強調している。
さらに「アメリカが繁栄すれば世界も繁栄する。西側諸国は増税や過剰な規制ではなく、民間活力を信じるべきだ」と欧州の経済運営にも苦言を呈した。
【生成AI】
今回のダボスではAIがあらゆる議論に入り込んでいると言われるほど、生成AIの影響と展望が幅広く議論された。
昨年のダボスでは中国の新興企業DeepSeek社がOpenAIに匹敵する性能で低コストの大規模AIモデルを発表し熱狂を呼んだが、2026年はむしろAIの実装段階での課題やリスク、社会への影響が焦点となった。
半導体大手NVIDIAの創業者ジェンスン・フアンCEOは「今こそ欧州にとってAIとロボティクスで飛躍する千載一遇の機会だ」と強調した。
欧州は強力な製造基盤を持つため、「ソフトウェア時代を飛び越え、AIインフラ構築で主導権を握れる」とし、今すぐ投資すべきだと訴えている。
同氏はさらに「ロボット技術は欧州諸国にとって一生に一度の好機」とも述べ、AIが雇用を奪うどころか新たな職業を生み出すと前向きな見通しを示た。
「配管工や電気技師といった技能職がAI時代に需要拡大し、賃金も倍増している。誰もが十分な生活を営める仕事に就けるので、AIで博士号を持つ必要はない」と具体的な例を挙げ、AIがもたらす職業構造の変化を語っています。
Microsoftのサティア・ナデラCEOは「世界全体がAIを有益なことに使い、人々や社会に良い結果をもたらすようにしなければならない」と述べ、AIの有用性を最大化する方向で技術を進めるべきだと強調した。
同時に同氏は、AI展開の地域格差にも警鐘を鳴らしている。「AIの展開は資本とインフラへのアクセスに大きく左右され、世界で不均一になるだろう」とし、グローバルサウス(新興国)への投資やインフラ整備が重要だと指摘した。
特に電力網や通信網など基盤整備は政府の役割が大きく、適切な政策と官民投資がなければAIの恩恵が偏在すると述べている。
また、Anthropic社のダリオ・アモデイCEO(元OpenAI研究者)は先端AIチップの輸出規制を巡って辛辣な発言をした。
同氏は米政権が対中輸出規制を一部緩和した動きを批判し、「高度AI用の半導体を中国に売るのは北朝鮮に核兵器を売るようなものだ」と発言している。
同氏はダボスで「中国への先端チップ供給を制限することこそ、米国がグローバルAI競争でリードを守るためにできる最善策だ」と主張し、権威主義体制が高度AIを手にすることへの強い警戒感を示した。
この発言はAIと地政学リスクの交差点にある半導体戦略として各国関係者に大きな印象を残した。
生成AIによる労働市場への影響も多面的に論じられた。
人材コンサル大手マーサーのパット・トムリンソンCEOは「職場でAIをどう使うかという懸念が従業員の間で非常に大きい」と述べ、ある調査では「昇給よりもAI研修を受けたい」と答えた社員が6割以上に上ったことを紹介した。
彼は「ソフトウェア開発の現場では、プログラマーが自ら手を動かす代わりに、AIが書いたコードを批判的に検証する能力が重要になる」と述べ、
プログラマーの役割がコードを書く職人からAIを監督する批判的思考者へ変わると予測している。
同様に、どの業界でも仕事のやり方がAIとの協働で変わっていくため、「自分の専門性のどの部分をAIに任せるか見極める判断力」が必要だと指摘した。
さらにAI規制と倫理のテーマでは、Siemens会長のジム・ハジマン・シュナーベ氏が興味深い提言をしている。
同氏は「EUのAI規制のように個別のユースケースを規制するより、AIが人間の価値観に準拠することを包括的に義務づける方が良い」と述べ、極端な提案として「広告ビジネスモデルに基づくAIを禁止することが有効だ」と提言しました。
広告収入目的のAIはユーザーエンゲージメント最大化のために有害な最適化を招きかねず(ソーシャルメディアが抱える問題のAI版)、人間の精神衛生や民主社会に深刻な悪影響を及ぼす恐れがあるためである。
総じて、生成AI分野では欧米中の産業競争から労働者の技能習得、規制のあるべき姿まで幅広い議論が交わされた。
【サイバーセキュリティ】
ダボス会議ではサイバーセキュリティの脅威と対策について、WEFの年次レポートや専門家の見解が示された。
世界経済フォーラムは年初に「グローバル・サイバーセキュリティ展望2026」報告書を発表し、そこで「サイバー犯罪による詐欺は今やランサムウェアを凌ぎ経営者の最大懸念事項となった」と警告している。
CEOらの間ではフィッシング詐欺やディープフェイク詐欺への懸念がランサム攻撃を上回りトップになったとの調査結果が報告された。
またAIの台頭がサイバー脅威を加速させており、昨年にAI関連の脆弱性が増えたと感じた組織は87%にも上り、サイバーリーダーの94%が「2026年に最も影響を与えるのはAIだ」と認識している。
生成AIを悪用した詐欺(偽の音声やチャットボット詐欺など)が世界中で拡大し、「地域も業界も問わず蔓延する脅威」となりつつあると指摘された。
地政学的なリスクもサイバー戦略を塗り替えている。
調査では64%の企業が国家が絡むサイバー攻撃をリスクシナリオに織り込んでおり、特に大企業では91%が地政学緊張を踏まえセキュリティ体制を調整しているとしている。
しかし、各国のサイバー防衛力に対する信頼は揺らいでおり、「自国が重大なサイバーインシデントに対応できる」と高い自信を持つ回答者は、中東・北アフリカで84%と比較的高い一方、中南米ではわずか13%と極端に低いことが明らかになった。
このように地域間で防御力の「サイバー不平等」が広がっている点も課題である。
才能ある人材や予算が限られる途上国・中小組織ほどサイバー防御が脆弱で、結果として全体のリスクが高まる構造にある。
例えばラテンアメリカやサブサハラ・アフリカでは6割以上の組織が「必要なサイバー人材が不足している」と回答し、一方で北米や欧州ではその割合がかなり低いというデータが示された。
こうした中、各国政府や国際機関の役割も議論された。
シンガポールのテオ・ジョセフィーヌ通信情報相(サイバーセキュリティ担当)は「AIの台頭はサイバー防衛を強化もするが、新たなリスクも生む。
国境を越えるリスクに備えるには各国政府が前向きかつ協調的なアプローチを取り、AIを責任ある形で活用してサイバー回復力を高めねばならない」と述べている。
またインターポール(国際刑事警察機構)や各国当局者も参加したセッションでは、サイバー犯罪に対する国際協調の必要性が繰り返し強調された。
民間側からは、イスラエルに本拠を置く大手セキュリティ企業Check Pointのジョナサン・ザンガーCTO(最高技術責任者)が興味深い見解を示した。
同氏は「生成AIの発展でサイバー攻撃の防御側も強化されているが、攻撃側もますます精緻になっている」と指摘し、世界全体のサイバー攻撃の発信元は中国が最も多く、次いでロシア、北朝鮮の順だと明かした。
特に昨今はオンラインのチャットボットを悪用し、ユーザーと対話しながら機密データを巧妙に盗み取る手口が増えているとして、「防御側も常に最新知識をアップデートし続けることが重要だ」と強調している。
リソースや専門知識の乏しい中小企業・自治体について同氏は「大企業はある程度きちんと対策できている。迷ったら大手セキュリティサービスを利用するのも一つの手だ」と具体的助言を述べ、サイバー対策のアウトソースも選択肢だと提案した。
WEFの報告書でも、「サイバー・レジリエンス(復元力)はもはや技術部門だけの課題ではなく、経済の安定や国家の強靭性、国民の信頼を支える戦略課題である」と位置づけられている。
攻撃の手口が高度化・速射化し、防御側の分断や準備格差が広がる中で、企業経営層は伝統的な受動的防御から「先進的でエージェント的なAIによる能動防御」へと発想転換すべきだ、との提言もあった。
幸いサイバー専門家の間には「2026年はサイバーセキュリティにとって転換点になる」という前向きな見方もあり(例えば「5つの理由:サイバー専門家が感じる楽観材料」といったWEF配信動画も公開されている)、ダボスでは脅威への警戒とともに新技術や協力による解決策も議論された。
【ロボット技術】
ロボット技術(ロボティクス)の進展についても、ダボスでは生成AIと並んで言及が見られた。
とりわけNVIDIAのジェンスン・フアンCEOCEOは「ロボティクスは欧州にとって一生に一度のチャンス」と述べ、製造業が強い欧州諸国がAIとロボットの融合で主導権を握れる可能性を強調した。
同氏の指摘によれば、AIの進歩により製造現場の自動化やサービス産業のロボット化が急速に進む中、欧州はハードウェア製造基盤を活かしてロボットインフラを構築し「ソフトウェア時代を飛び越える」ことができるとしている。
また、AIが高度化するほど人間には新たな手仕事が生まれるとして、「配管工や電気工などトレード技能職への需要が大きく伸びており、賃金もほぼ2倍になった」と紹介し、高度な知識労働だけでなく現場系の仕事がロボット時代に脚光を浴びるとした。
この発言は「ロボット=雇用喪失」という単純な構図ではなく、人とロボットの協働による産業発展を示唆している。
一方、軍事・警備用途のロボットについては、安全保障セッションで議論されています。例えば「深海から軌道まで:フロンティアの安全保障」というパネルでは、海底と宇宙空間という新たなフロンティアにおける安全確保がテーマとなり、そこでは無人潜航艇や警備ロボット、宇宙デブリ除去ロボットなどの重要性が議論された(欧州宇宙機関(ESA)のヨゼフ・アシュバッハー長官やスイス宇宙局のレナト・クルプーン局長らが登壇)。
このように、ロボット技術は産業界だけでなく安全保障やインフラ維持など幅広い分野で不可欠との認識が示されました。
総合すると、ダボス会議ではロボット技術はAIと並ぶ変革テクノロジーとして扱われ、特に欧州の産業競争力強化策や各国の協力の文脈で語られた。
今後は地域ごとの強み(日本・韓国の産業ロボット、米国のロボットAIソフト、欧州のロボット規制と製造基盤、中国の大規模導入力など)を活かしつつ、共通の課題(標準化、安全・倫理、労働への影響)に取り組むべきとの声が聞かれたとまとめられる。
後編に続く・・・
